私のんたん、ご縁がありまして先日、埼玉県秩父市にある「ベンチャーウイスキー」さんにお邪魔してまいりました
今回はその時のお話をさせていただきたいと思います
※かなり長めなので、お時間のある時に読んでいただければ幸いです
代表の肥土伊知郎氏自ら、所内を案内していただきました!
ウイスキーの原料に使用されるのは二条大麦
モルトスターと呼ばれる麦芽を製造販売している会社から仕入れています
これはドイツのもの
現在、地元秩父の農家さんに協力していただき、地元産の大麦での製造も視野にいれているそうです!
まだ稼働していませんが、キルンと呼ばれる大麦麦芽を熱風で乾燥させる設備が所内にあります
乾燥させるためにはピート(泥炭)を乾かしたものを燃やします
このピートも秩父からほど近い飯能で、わずかですが採取されるピートを使用してモルティングしウイスキー作りに使う計画もあるのだとか!!
蒸溜所で麦芽作りを行うフロアモルティングを行なっているのは、本場スコットランドでもわずかに5箇所のみ!
実現すれば、正真正銘国産のウイスキーが誕生することとなります!すごーい!
※ビールではローストした麦芽を使うことがありますが、ウイスキーにおいては黒いモルトは糖化しないため使用しません
それでは簡単にウイスキーが出来上がるまでの工程をご紹介いたしましょう
ウイスキーを作る工程は、途中まではビールと似ています
まずは麦芽をミルで粉砕
粉砕した麦芽は、ハスク(殻)/グリッツ(粗挽き)/フラワー(粉)と3つの異なる仕様に挽き分けられます
セオリー通りに分類するならばハスク2:グリッツ7:フラワー1の比率になるように粉砕するのが理想だそうなのですが、
実際のところ、品種や季節で微調整をしているそうです
麦芽はミルで粉砕された後
マッシュタン(糖化槽)で糖化という工程を行い、麦汁を作ります
3度に分け温度の違うお湯をかけ糖度を14%まで引き上げます
この時、先ほどのハスク(殻)が濾過槽の役割を果たします
ハスクが荒くても細かすぎてもフィルターの役割を果たさないため、粉砕の作業から重要、となるわけです
この麦汁をウォッシュバック(発酵槽)という工程で専用酵母を加えてアルコール発酵をさせます
発酵期間は調整を加えながら、4日間におさめるそう
(発酵が始まってしまうと止められないので、着地地点を合わせる為、温度を季節によって微調整します)
ベンチャーウイスキーの発酵槽は全てミズナラというオークを素材に使っています
世界中を見ても発酵槽にオークを使っているのは秩父蒸溜所だけなのだそう!!またもやすごい!!
このオーク出で来た発酵槽を使うことで良質な乳酸菌が育ち、より良い発酵が可能なのだとか
うひゃー!
上から中を覗かせていただきました!
ぼこぼこと大きな泡が立っています
ウォシュバックの上部には羽が回っているのですが、これは撹拌のためではなく泡をつぶすため
ウイスキーの発酵の際、泡が大きければ大きいほど良いとされているのですが、盛り上がった泡が樽の外へ溢れ出るのを防ぐために泡をつぶしています
なるほどー
この発酵を終えたものをポットスチル(蒸留機)で蒸留にかけます
スチルポットは絶対に銅製!!
他の金属ではウイスキーにはならないのだとか
これは蒸留する際に蒸気と銅イオンがまざり不純物を取り除いてくれるからで、
その代り、使うたびに少ーしずつもろくなっていくため、穴があいてしまうことも!!
それをいち早く見つけるために、隅々まで磨き上げ、同時に点検もしているそうです
だからどこの蒸留所もピカピカなんだなぁ
ポットスチルは身を削って、ウイスキーを美味しくしてくれているのですね
秩父蒸留所のポットスチルはスコットランドにあるフォーサイス社製で、ベンチャーウイスキー特注!
職人さんが手造りしたハンマーの跡などがうかがえます
ポットスチルの形や大小で大まかな味わいが変化するのですが、
小さい釜だとヘビーでリッチな味わいに
さらには、ラインアームに角度がつくほどリッチな味わいになるそうで、この形状を見る限り「力強く豊かな味わいの原酒」を目指していることが伺えます
蒸留したての原酒は無色透明で、ニューポットと呼ばれます
蒸留した原酒は全てが熟成されるわけではなく、ヘッド/ハート/テールと3種類の部位に分けられ、ハート呼ばれる中心部分のみ使用されます
飲み比べをさせていただいたのですが、確かにヘッドはアルコールの香りが強く、テールはもったりとした甘さの残る味わい(肥土氏は芋焼酎とたとえていらっしゃいましたが、確かに似ていました)、やはりハートがクリアで甘味もあるバランスの良い味でした
このより分けの見極めに使われるのがスピリットセーフ
どうやって分けているかというと、時間の長さなどもありますが、なんと人間の五感による作業!!
目視するために、このように窓がついており、蒸留の様子が伺えます
そして蒸留士のタイミングで、先ほどの3つに分類され、ハートが取り出されるわけです
職人技!!
これを樽で熟成させることで、樽の成分が染み出しあの琥珀色と芳醇な香りが生まれます
現在はホッグスヘッドと呼ばれるホワイトオーク製の樽が主流だそうなのですが、
この熟成をさせる樽にも色々種類があり、新樽はもちろん、バーボン・シェリー・ワイン・ポートワイン……それぞれの熟成を終えた樽を使用することも多いです
仕上げの熟成として、ウッドフィニッシュと呼ばれる別の性質を持つ樽に移し替えて熟成させる製法をとることもあります
ちょうど外にはアメリカから届いたばかりだという「バッファロートレース」というバーボンの樽が!
特別に開けていただき、中を嗅がせていただけることに!!!!
開栓して直後に周りに漂う甘い香りにうっとり☆
この樽がイチローズモルトとしてどのように活かされるのか、とても楽しみです
さて、樽の貯蔵庫へと入れていただきました
樽の貯蔵庫内、樽の下は剥き出しの地面です
これはウイスキーができるだけ秩父の自然の力をこの蒸溜所ならではの味わいに育って欲しい、というお考えからのようです
下に置かれるほどゆっくりと熟成し、上に置かれるほど熟成が早まります
樽の大きさも影響するようで、大きいものだとゆっくりと熟成し、小さいものだと熟成が早まります
特殊な樽は意図的に置く位置を決めるそうなのですが、味にばらつきを持たせるため、又まだまだ未知数な秩父の土地を知るため、位置のローテーションは基本的にしません
これはブレンドをする際に、個性が際立っていた方が合わせやすいから、とのこと
なるほどー
熟成が進むうちに中の液体が蒸発し、本来の量よりも少し減ってしまいます
この現象をエンジェルズシェア(天使の分け前)と呼ぶんだそうですが、
何てロマンチック♪
このエンジェルシェアをケチると美味しいウイスキーは出来ないのです!!
天使のご加護が受けられないわけですね!
(液量が減るからと文句を言ってはいけません!)
ちなみに、工場が休止する夏場のメンテナンス期間に全樽のテイスティングを行うそうです!!
羨ましい気もしますが、ただでさえ神経を使うテイスティングを1日約50種……嗅覚がおかしくなってしまいそうです(><)
うひゃー!
こうして認められたものたちが、ボトリングされ世に出回るというわけです
製造工程は割愛解説しても長くなる一方で本当に語りきれません!
ぜひ興味のある方は国内の蒸留所を訪ねるか、お店に来て私の話を聞いてくださいね(笑)
それだけ丁寧にこだわりをもって、たくさんの工程を重ね、出来上がるのがウイスキー
伝統と歴史をかたくなに守り続け、今日まで脈々と受け継がれた味わいを感じられる幸福感!
何年も熟成をかけ、そんな夢とロマンの詰まったお酒なのです!!
その後、試飲ブースにて試飲をさせていただきました♪
さて、
何故ビール屋がこんなにも熱くウイスキーの話をするのか
前置きが長くなりましたが、ちゃんと理由があるのです
ウイスキーは樽で熟成することによりあの琥珀色と風味が生まれると前述しましたが、
近年ビールにおいても、醸造後のビールを樽で追熟させる製法が出回っています
この使用される樽も、ウイスキー同様、様々な樽を使用します
これは風味付けはもちろん、オーク樽由来による乳酸菌発酵をさせ酸味のあるビールをつくるねらいがあります
ヨーロッパやアメリカではポピュラーな製法であり、(もちろんバーボン製造やワイン醸造が近隣で行われており、日本よりも格段に樽が手に入りやすいということもありますが)割と小さな醸造所やブルーパブでも行われています
先日渡米した際にも、たくさんそういった光景を目にすることが出来ました
日本においても、ワイン樽の熟成など、たまに目にするようになりましたね
ビールもこの樽熟成を経ることで、香りや味わいの幅が広がるのです
既にお飲みになったことがある方ならば、その威力はご存じのはず
実は、
我々タルシスリッジブルーイングも醸造所開設の暁には、この樽熟成にチャレンジしたいと考えております
そこで、ベンチャーウイスキーさんの使用した樽を使わせてはいただけないかなぁ、という話を前々からしておりました
もちろん輸入することは容易ではないですが可能です
が、
お店の根底のコンセプトとして、なるべく作り手の顔が見えるものを重視し大切にしようと運営しております
これが実現できたなら、素敵な科学反応がおこるのでは!という考えのもとです
私がベンチャーウイスキーさんを訪ねたのにはそういった経緯もあったのです!
(単純にモルトが好きだというとこからの波及なのは否めませんが……(笑))
不躾なお願いにも関わらず、興味を持っていただき快いお返事をいただきました
まだまだまだまだ……先のお話にはなりそうですが
実現の如何には関わらず、このようなお話を肥土氏と直接出来たことに興奮していたわけです
いやぁ、お酒の種類に限らず酒談義は本当に楽しいものです
更に醸造所の開設が楽しみになってきました!
様々なアプローチで素敵なビールを味わっていただくべく、これからも奔走しようと思います
今後もWatering Holeをよろしくお願いいたします
最後までお読みいただきありがとうございます!!
語りきれないあれこれはお店で直接!!
ビールをチェイサーにウイスキーとまでは言いませんが、たまには〆にウイスキーはいかがですか??
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nontan